サブタイトル
将来を見すえ、教育の課題に向き合う
特集内容
世界的なグローバル化の気運の高まり、新型コロナウイルス禍におけるデジタル化
の加速等、社会環境が大きく変化するとともに、多様性を理解し尊重する社会の実現
が求められる今だからこそ、子どもたちが現代的な諸課題に対応できるようになるた
めに必要な資質・能力の育成が求められている。
「教育シンポジウム in 東京2024」は、「将来を見すえ、教育の課題に向き合う」
を全体テーマとし、「総合プログラム」と「特別支援教育プログラム」で構成された。
「総合プログラム」では、現行学習指導要領のキーワードである「社会に開かれた教
育課程」や「主体的・対話的で深い学び」について解説するとともに、学習指導要領
の次期改訂を見すえて、様々な教育課題について議論がなされた。また、4年ぶりに
開催された「特別支援教育プログラム」では、通常の学級において誰一人取り残さな
い学びをテーマに、通常の学級における児童生徒の現状が報告されるとともに、実践
研究の成果からアセスメントの重要性が強調された。
目次等
総合プログラム 現行学習指導要領の成果と課題 ~次期改訂を見すえて~
【基調講演①】
「学習指導と評価の動向 ~地に足のついた改革に向けて~」
市川 伸一 東京大学名誉教授
帝京大学中学校・高等学校 校長
【基調講演②】
「『社会に開かれた教育課程』の動き ~キャリア形成の視点から~」
藤田 晃之 筑波大学人間系 教授
【トークセッション】
「現行学習指導要領の成果と課題 ~次期改訂を見すえて~」
コーディネーター:市川 伸一
パネラー:松下 佳代 京都大学大学院教育学研究科 教授
古沢 由紀子 読売新聞東京本社 編集委員
滝渕 正史 東京都品川区立立会小学校 校長
特別支援教育プログラム 通常の学級において誰一人取り残さない学びを目指して
【行政レクチャー】
「通常の学級における児童生徒の現状から考える」
加藤 典子 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 特別支援教育調査官
【講演】
「学びを楽しみ、学びから自信を得る」
海津 亜希子 明治学院大学心理学部 教授
【対談】
「通常の学級において誰一人取り残さない学びを目指して」
加藤 典子 海津 亜希子
取材概要等
開催方法:オンデマンドによる動画配信
配信期間:令和6年3月11日(月)12:00~31日(日)20:00
主 催:公益財団法人 中央教育研究所
後 援:東京都教育委員会,茨城県教育委員会,
神奈川県教育委員会,群馬県教育委員会,
埼玉県教育委員会,千葉県教育委員会,
栃木県教育委員会,長野県教育委員会,
新潟県教育委員会,山梨県教育委員会,
株式会社時事通信社
協 力:株式会社学習調査エデュフロント,
東京書籍株式会社
内容紹介
(本文より)
すでに、学習指導要領の次期改訂をめぐる議論が始まっています。有識者会議や中
教審の教育課程部会の雰囲気からは、現行学習指導要領や教育施策に対して、全体的
には非常に肯定感が強いように感じられます。一方で、わかりにくさからくる学校現
場の混乱には、あまり触れられていません。
目指すべき教育の方向性については、探究重視、「子ども中心」、「子どもに委ね
る」といった論調が比較的多く見られます。しかし、これが行き過ぎると指導の軽視
や基礎学力の低下につながりかねません。
カリキュラム・オーバーロードも大きな論点です。
(市川)
社会に開かれた教育課程においては、子どもたち、保護者、地域の皆様方、全員が
一つの目標を理解した上で、それぞれができる限りの努力をしていくことが求められ
ています。私たちは新しい社会を、新しい未来を切り開けるのだという希望に基づい
た状況の把握、理解が、社会に開かれた教育課程の実現の前提になると思います。
(藤田)
カリキュラム・オーバーロードへの対策は条件整備も含めいろいろ考えられますが、
私は教えるべきことを絞って、「組み合わせ」、「一石二鳥」、「less is more」とい
う考え方で対応するのが一つの方向ではないかと思っています。具体的な私の提案は、
「対話型論証」です。対話型論証は、ある問題に対して、他者と対話しながら、根拠
をもって主張を組み立て、結論を導く活動です。
(松下)
学習評価については、ノートの取り方やスケジュールの組み方まで評価することが
果たして学校現場で適切なのか、また、そのプロセスをどう評価するかは非常に難し
いと、私も取材で感じております。中学校の場合は、高校入試で内申書が重視される
ことが評価にゆがみが生じている原因です。(中略)本当に生徒のためになる評価と
はどういうものなのかを、もう少し考えていかなければならないと思います。
(古沢)
小学校では、その学習がどのくらい理解できているかどうかを子ども自身がきちん
と捉えていくこと、教師が子どもの状況を捉えながら自分の授業を振り返る一つのきっ
かけにしていくことが必要だろうと思っています。本校で見ていると、ねらいを明確
にして、こういう力を付けさせたいという授業ができていくと、子どもがはっきりと
「今日はこれができた」、「これはまだできない」などと、自己評価の観点をもつと
いう実感があります。
(滝渕)
小・中学校の通常の学級においては、半数以上が授業時間内に教室内で個別の配慮
や支援を行っているという結果が示されています。担任の先生方に日々の授業の中で
様々な工夫をしていただいていることを非常にありがたく感じていますが、担任等個
人としての取組で終わらないように、学校組織全体の取組としてさらに進めていく必
要があると考えています。さらに、切れ目ない支援体制の構築を図るためにも、それ
ぞれの地域の実情に応じて外部機関との連携強化や体制整備を進め、校内支援体制の
充実に取り組んでいただけるとうれしいです。
(加藤)
配慮を必要とする子どもが配慮を受けるために、私たちは、子ども一人一人のニー
ズを鑑みて、その子どもが配慮を受ける目的、その子どもの特性(障害の状況)、学
校やテストで実施できる配慮を見極め、その配慮で予測される効果を整理する必要が
あります。さらに、過去にどういった配慮でその子どもの力をしっかりと測れたのか
という配慮の先行経験を積み重ねていくことが、その子どもへの配慮を広げていくた
めの非常に重要なポイントになります。
(海津)
|