サブタイトル
学校の力・教師の力 ―学力の多極化、教育ニーズの多様化を超えて―
特集内容
教育シンポジウム in 東京 2015は、「学力向上」と「特別支援教育」の両面 から、子どもの学力の多極化、教育ニーズの多様化が進む教育現場において、
教室における個々の教育ニーズにどのように応えていくかを考えるとともに、
この課題の背景と現状、課題克服のための方策について総合的に検討された。
授業改善や学校の組織的取組における学力の底上げ、優れた能力開発、学ぶ
喜びや達成感の獲得、これからの社会に求められる資質や能力の育成などの
問題に、教科指導や学校経営、特別支援教育等の多角的な視点からアプローチ
していく。
目次等
【ジョイント・ディスカッション】
「『学力向上』と『特別支援教育』~二つのテーマのめざすもの~」
丹野 哲也 山中 ともえ 志水 宏吉 無藤 隆
【行政報告】
「インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」
丹野 哲也 文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課 特別支援教育調査官
【講演】
「学校にある資源で取り組む合理的配慮の工夫
~特別支援教育の視点を生かして~」
山中 ともえ 東京都調布市立調和小学校 校長
「学力格差を生み出すものとその是正の方途」
志水 宏吉 大阪大学大学院人間科学研究科 教授
「資質・能力を中心に学力向上を考える」
無藤 隆 白梅学園大学子ども学部 教授・大学院子ども学研究科長
総括「シンポジウムを終えて」
寺﨑 昌男 公益財団法人中央教育研究所 理事長/東京大学名誉教授
取材概要等
日時:平成27年2月28日(土)
会場:清泉女子大学2号館240教室
主催:公益財団法人 中央教育研究所
後援:東京都教育委員会,茨城県教育委員会,
神奈川県教育委員会,群馬県教育委員会,
埼玉県教育委員会,千葉県教育委員会,
栃木県教育委員会,長野県教育委員会,
新潟県教育委員会,山梨県教育委員会
㈱時事通信社,東京教育研究所,
㈱学習調査エデュフロント
内容紹介
(本文より)
配慮を要する子どもだけではなく全体にとってわかりやすい授業を考えていくとき
に、まず、学校の体制を整えるということが必要です。小学校は学級担任制なので、
子どもの実態が担任教員だけの見方に偏ってしまうことがあると思います。その
ため、特別支援教育コーディネーターや学年のほかの教員など、複数の教員で子ども
の実態を把握していくことが必要だと思います。
(山中)
学力問題に取り組みはじめた時点では、一人の子どもの学力を教師がどうアップ
するかということが大事だと思い、教師力のレベルで考え始めました。しかし、
数年経って「違うな」と思いました。教師力だけでは、若い先生が増えてきた
ときに対応しきれないのです。大事なのはチーム力、組織力だと気づきました。
さらに、学校だけに期待するのは酷です。スクールバスはガソリンがないと
走れません。ガソリンを供給する、つまり順調に走れるような環境を用意する
のは、行政の役目だと思います。教師の力、学校の力、そして教育行政の力が
かみ合えば、学力格差を克服できる可能性は大いにあると考えています。
(志水)
最後の「inspire」は、本来、「吹き込む」という意味ですが、そこから転じて
「奮い立たせる、鼓舞する」という意味があります。つまり、子どもの心を刺激し、
自らやってみたいと思わせることです。これは、無藤先生が、教師の仕事は、
「子どもたちを能動的に働かせ、学びに向かう力を育てること」つまり「子ども
たちに学ぶことに興味を持たせ、子どもたち自身が学びに集中して持続する力を
育てること」とおっしゃったことにも通じます。やはり、一番重要なのは、子ども
たちの心の中のあるものを「inspire」=「奮い立たせる」ということです。
実際、この「inspire」が、今日の教育現場でも非常に重要です。これこそ
「偉大なる教師」しかできないことなのです。
(寺﨑)
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